2009/01/19

未練たらたら

『開拓者』というテレビ番組で、
野茂英雄投手の特集をやっていた。

野茂選手が近鉄バッファローズを退団して
メジャーリーグに移籍した経緯から、
アメリカに渡ってからの活躍、
現役引退までのドキュメンタリーだった。

野茂選手は低迷していたメジャーリーグ人気に
火をつけた。
ストレートとフォークのたった2つの球種で、
アメリカ中を熱狂させた。

野茂がいなければ、
イチローも松井も松坂も
メジャーに行くことはできなかっただろう。

まさに開拓者である。

私が彼に心を奪われたのは、開拓者としての偉業より
次のコメントにあった。

元ヤクルトスワローズの古田が、
「引退してみてどうですか?」
と聞くと、野茂は
「未練たらたらですけどね」
と言ったのである。

未練があると言いきっての引退。
そういう線の引き方があってもいいのだ。

引退会見で、 すがすがしく
「やりきりました!」「悔いはありません」
と言って終わるのだけが全てじゃない。

今まで人生のすべてをかけてやってきたとこに
そうあっさりと区切りをつけるなんてできっこない。

どこかで未練や悔しさがあるから、
「悔いはありません!」
と笑って言いながら
涙が出るのではないか。

野茂はメジャーでも語り継がれる
大投手でありながら、
引退会見を開かなかった。

「未練たらたらです」
と笑って言う野茂は、とても美しく感じた。

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